Evening Moon over the Mountain 「山の夕月」 昭和15年(1940) 現存するなかでは月を描く最初期の作例である本作は、埼玉県秩父市の三峰(みつみね)集落あたりを描いたものである。秩父の札所をしばしば訪れていた野十郎にとっては、この地は親しみ深い場所であったのだろう。月の作品は、当初は本作のように具体的な場所において写生されていたが、徐々に場所のイメージが絵の中から捨象(しゃしょう)され、暗闇の中に浮かぶ月というきわめて抽象化された画面へと変化していく。 油彩・画布 / 45.6×60.8㎝