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筑後川遠望

Distant View of Chikugo River

「筑後川遠望」

昭和24年頃(c.1949)

前景には満開の桜の花が咲き、中景には筑後平野の田園風景と、そこを横切って悠々と流れる筑後川が、そして遠景にはなだらかな山並みが描かれる。ここに広がる視界がどこかぼんやりしているのは、春霞たなびく様子を写そうとしたからであろうか。本作は、野十郎のふるさとである福岡県久留米市の、耳納山系の西端にある高良大社のあたりから、その北側に広がる風景を描いたものと思われる。この小高い丘に立てば、野十郎の生まれ育った生家のあたりもまた見渡すことができる。その頃すでに縁遠くなってしまった故郷を懐かしんだであろう野十郎の切ない心情に寄り添って、この麗しい風景を味わってみたい。

油彩・板 / 21.2×33.4㎝