近代日本画名品10選

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福岡県立美術館の所蔵作品の中から、福岡県ゆかりの作家による珠玉の日本画をご紹介いたします。

「松浦川」

吉村忠夫

昭和17年(1942)

絹本着色・軸装

49.0×56.5cm

川のほとりで女性が二人、何かおしゃべりをしながら釣りをしています。服装や髪型を見るに、天平文化華やぐ奈良時代の様子ですが、本作は『古事記』にある、神功皇后が、現在の佐賀県北部を流れる松浦川で鮎釣りをしたという故事に取材しています。吉村忠夫は、10年間正倉院宝物の調査に携わるなど、歴史研究にも長けていました。彼女たちの風俗は、吉村の研究に基づいてアレンジされたものでしょう。

吉村忠夫(よしむらただお・1898-1952)

福岡県遠賀郡黒崎町(現・北九州市)に生まれる。東京美術学校に図書係として勤務中、画才を認められ大正4年(1929)同校日本画科に推薦入学、松岡映丘に師事する。官展にて活躍し、昭和5年には審査員になった。同14年日本画院を創設。大和絵の伝統と歴史研究を生かした歴史風俗画を多く描いた。
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