水のある風景

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海や川、湖など、水のある風景はしばしば多くの画家の心を捉え、様々なかたちで絵画に描かれてきました。ここでは、10人の洋画家が描いた「水のある風景」をご紹介します。風景画を中心に、水のある風景の中に描かれた人物など、「水のある風景」が見せる様々な表情をお楽しみください。

「漁村」

真隅太荘

昭和6年(1931)、第18回二科展

油彩・画布

63.5×78.6cm

佐賀県の呼子の地に取材して描かれた本作では、山を背後にいだき、前景には船や家屋など、のどかな漁村の風景が捉えられています。どっしりとした骨格のうえに、同系色が重なり合って心地よいリズム感を生み出している本作には、当時の洋画壇で盛んに受容されていたセザンヌの影響を見ることもできます。美しい海に囲まれた志賀島(福岡県)の出身であった真隅太荘にとって、海や漁村の風景は最もなじみ深い主題であったようです。

真隅太荘(ますみたそう・1893-1972)

福岡県粕屋郡志賀島(現・福岡市)に生まれる。東筑中学卒業後の明治42年(1909)、画家を志して上京し、太平洋画会研究所に学ぶ。その後帰郷し、大正元年(1911)福岡市初の画家グループ・アカシア会を設立する。その後も西日本南方社、改組福岡美術会、二科西人社等の結成に参加するなど、昭和初期の福岡画壇の中心人物の一人であった。大正12年から約20年間、九州帝国大学農学部に描画嘱託として勤務、植物などを正確に描写し、学術資料とする仕事に従事する。同時に同大美術部員の指導にもあたった。昭和15年(1940)、福岡県美術協会の結成に参加、戦前戦後を通じて県展に出品を重ねた。
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