海原のような揺らぎのある動きを感じさせる穏やかな桃色の帯状の線の間に、太陽と思しき円が描かれています。独特の表情を持つ赤と桃色の組み合わせからなる画面は、詩情豊かであたたかな雰囲気に満ちています。本作は、信子が98歳の時に手掛けた作品です。「赤の赤星」と呼ばれた信子の最晩年の作品では、赤の持つ鮮烈さや強烈さという印象が影を潜め、本作のように独特の奥行き感や陰影を持つ揺らぎのある赤が用いられています。円熟の境地に達したということができるかもしれませんが、この作品に「ゆらぐ」というという名がつけられていることからも、赤い色の様々な表情や揺らぎを描こうというという思いがあったのかもしれません。