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筑後洋画の系譜
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福岡県は、日本近代洋画史に大きな足跡を刻む著名な洋画家を多数輩出していますが、なかでも久留米を中心とする筑後地区では、綺羅星のごとく多くの洋画家が生まれており、洋画王国とも呼ばれているほどです。ここでは青木繁、坂本繁二郎、古賀春江をはじめとする、筑後ゆかりの10人の洋画家の作品を紹介します。彼らのなかに脈々と受け継がれる、筑後洋画のDNAを感じてください。
「百花(2)」
藤田吉香
平成7年(1995)、第69回国展
油彩・画布
160.2×128.5cm
椿や牡丹の大輪の花が、バスケットから溢れるほどに盛られていますが、「百花」と題するこの絵の中心主題であるはずの花々の色彩は消去され、モノクロームとして均質化されることで、画面に独特の静謐さが加えられています。明確な輪郭と陰影表現を持つ、彫刻にも通じるような花々の背景には金箔のマチエールを表すかのように金色を塗り、平面的な空間を作り出しています。藤田吉香は、空間性を排除した背景の中に克明に描写された花や静物を描く、新しい日本の装飾画とも呼べる、独特の画風を開拓しました。そこには、油彩画という西洋由来の画法を駆使しつつ、そこに日本的な美意識も融合させながら、存在するということの神秘に迫ろうとしているかのような強い意欲が見てとれます。このような藤田の作品には、師の松田諦晶や、敬愛する坂本繁二郎から継承した、筑後洋画の系譜が確かに息づいています。
藤田吉香(ふじたよしか・1929-1999)
福岡県久留米市に生まれる。県立中学明善校を経て、昭和30年(1955)東京芸術大学を卒業。同34年国展で国画賞を受賞する。同37年から41年までスペインに留学し、この間ボッシュなどの古典絵画を模写。同42年国画会会員に推挙される。同45年第13回安井賞を受賞、同56年第1回宮本三郎賞を受賞。金、銀などの単色の背景に花や人物などのモチーフを浮き立たせた画面は、初期ルネサンス絵画にも通じる静謐な情感をたたえている。