輝く色彩

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絵画作品において、色彩は極めて重要な役割を持ち、用いられる色によって作品へもたらす雰囲気や印象が大きく変わります。ここでは絵画作品における色彩に注目し、華やかな雰囲気を持つ、色彩豊かな作品をご紹介します。

「巴里郊外」

大内田茂士

昭和32年(1957)、第13回日展

油彩・画布

91.0×116.5cm

昭和31年(1956)に半年間にわたってフランス、イタリア、スペインなどを巡遊した大内田茂士は、以後自らの絵画の様式を大きく変えます。西洋美術の伝統と、同時代の新しい美術の潮流を踏まえつつ、とりわけ本作のようにニコラ・ド・スタールの影響が色濃い抽象画のスタイルを確立しました。赤や白、黄色や青の色面をリズミカルに配置した画面からは、華やかなハーモニーが聞こえてくるようです。とはいえ、本作は純然たる抽象画ではなく、太陽の光を受けて輝く赤い屋根と白い壁の家々が、山の斜面に沿って立ち並ぶ実在の風景を確かに感じさせます。

大内田茂士(おおうちだしげし・1913-1994)

福岡県朝倉郡大福村(現・朝倉市)に生まれる。県立朝倉中学を卒業後、浜哲雄、山喜多二郎太、髙島野十郎らに指導を受ける。昭和12年(1937)上京、新宿絵画研究所で鈴木千久馬に師事。翌々年光風会展に初入選し、その後国展にも連続入選。戦後は日展に出品し、同26年に特選を、また国展でも同22年国画賞を受賞する。同23年からは国展を退き、示現会の創立会員となり同展に連続出品。同38年日展審査員となり、翌年会員、同53年評議員、平成元年理事に就任。示現会では昭和52年常務理事になる。同63年日本芸術院賞恩賜賞を受賞し、平成2年(1990)には日本芸術院会員に推された。
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