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花やぐ美術館
10/10 -
美しい自然、とくに花や草木は、洋画日本画、具象抽象を問わず、絵画の主題として描かれてきました。福岡県立美術館の所蔵作品から、季節と観るものの心を彩る華やかな自然を作品をご紹介いたします。
「はる」
山喜多二郎太
昭和37年(1962)、第48回光風会展
油彩・画布
97.0×145.5cm
一見すると何が描かれているか、思わず首をかしげてしまう作品ですが、本作のタイトルは「はる」。冬を経て一斉に芽吹きうごめくくいのち、やわらかな日差しと湿潤な春雨、耕される土の香り……様々な、しかしどことなく大地から発せられる「はる」が想起されます。本作は油彩画ですが、「油墨一如」と称されるほど水墨画も得意とした山喜多。黒い絵具による自由闊達な筆跡や、中間色によるぼかしたような彩色には、油彩でありながら水墨画のような雰囲気を感じさせます。
山喜多二郎太(やまきたじろうた・1897-1965)
福岡県鞍手郡山口村(現・宮若市)に生まれる。大正4年(1915)東京美術学校に入学、藤島武二に師事する。また在学中に日本画家寺崎広業にも師事。同9年から帝展に入選を重ね、昭和9年(1934)特選を受賞。また大正14年から光風会展にも入選を重ね、昭和9年会員となる。戦後は日展、光風会それぞれの委員を歴任。油彩画に南画的画趣を加味し、後年は次第に抽象化の傾向を強めていった。水墨画も得意とした。