描かれた女性たち

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絵画制作のモデルとして、女性はしばしば絵画に描かれてきました。それは専属のモデルであったり、家族や親しい友人であったり、はたまた見知らぬ誰か、ということもあるでしょう。ここでは、福岡県立美術館の所蔵作品の中から、女性たちが登場する作品をご紹介いたします。

「婦人像」

中村琢二

制作年不詳

油彩・画布

116.7×90.9cm

大柄の黄色と黒の矢絣文様の着物を着て、白い椅子に腰かけ、組んだ足には浅履きのスリッポン、前髪にはパーマがかかっており、モダンな雰囲気ただよう女性です。本作に描かれるのは、中村琢二の妻。人物画を得意とした琢二の作品には、モデルとして家族がしばしば登場します。少し上から見下ろしたような、床面が多く描かれる構図というのも、画家の特徴の一つ。少ない輪郭線で色の塊ごとに形を捉えるような描き方からは、琢二のマティス受容が見て取れます。

中村琢二(なかむらたくじ・1897-1988)

中村研一の実弟として新潟県佐渡島に生まれる。のち福岡県宗像郡に移住。県立中学修猷館を経て、大正13年(1924)東京帝国大学を卒業。昭和3年(1928)帰国した兄の勧めで本格的に絵筆を握ることを決意。昭和5年安井曽太郎に師事し、同年から二科展に連続入選する。同17年一水会会員となり、戦後は日展にも出品を重ね、同会顧問となる。明快な色調と軽妙なタッチの親しみやすい風景画、人物画を得意とした。
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