水のある風景

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海や川、湖など、水のある風景はしばしば多くの画家の心を捉え、様々なかたちで絵画に描かれてきました。ここでは、10人の洋画家が描いた「水のある風景」をご紹介します。風景画を中心に、水のある風景の中に描かれた人物など、「水のある風景」が見せる様々な表情をお楽しみください。

「冬の小網代」

中村琢二

昭和62年(1987)

油彩・画布

31.8×40.9㎝

神奈川県の三浦半島にある小網代に取材して描いた風景画です。小網代は入り組んだ海岸段丘の地形で知られた場所ですが、青空の下、高台のベランダ越しに見た、澄んだ冬の海が印象的に描かれています。旅を愛した中村琢二は、全国各地を旅してまわりました。旅先には本作のような小さなキャンバスを持っていき、気に入った風景が見つかると、その場ですぐさま絵に仕上げていたそうです。みずみずしいタッチからは、美しい風景を目の前にした、琢二の感動が伝わってきます。

中村琢二(なかむらたくじ・1897-1988)

中村研一の実弟として新潟県佐渡島に生まれる。のち福岡県宗像郡に移住。県立中学修猷館を経て、大正13年(1924)東京帝国大学(現・東京大学)を卒業。昭和3年(1928)帰国した兄の勧めで本格的に絵筆を握ることを決意。昭和5年安井曾太郎に師事し、同年から二科展に連続入選する。同17年一水会会員となり、戦後は日展にも出品を重ね、同会顧問となる。明快な色調と軽妙なタッチの親しみやすい風景画、人物画を得意とした。
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