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花やぐ美術館
9/10 -
美しい自然、とくに花や草木は、洋画日本画、具象抽象を問わず、絵画の主題として描かれてきました。福岡県立美術館の所蔵作品から、季節と観るものの心を彩る華やかな自然を作品をご紹介いたします。
「雲井桜」
吉田博
明治32年頃(c.1899)
水彩・紙
49.5×67.5cm
月夜に照らされる満開の枝垂れ桜のもと、夜桜見物に来た着物姿の三人の女性。タイトルの「雲井桜」とは奈良県吉野山の桜のことです。少し引いたところから、逆光になる桜と彼女たちを描く本作は、どこか幻想的で、ノスタルジックな雰囲気が漂っています。明治32年、渡欧のために経由したアメリカで作品が人気となった吉田博。水彩や、のちに木版画で制作された作品群は、卓越した描写力で日本的情緒(異国的情緒)を表しています。
吉田博(よしだひろし・1876-1950)
福岡県久留米市に生まれ、明治20年(1887)福岡市に転居。県立中学修猷館を卒業後、同26年京都で田村宗立に師事。翌年上京して不同舎に入り、同30年頃から明治美術会会員となる。太平洋画会結成に参加し、昭和22年に会長となるなど生涯同会の重鎮として活躍。文展でも連続受賞後、審査員を務める。実際に登攀し実見した内外の山岳風景を、主に水彩画や版画によって表現した。