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描かれた女性たち
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絵画制作のモデルとして、女性はしばしば絵画に描かれてきました。それは専属のモデルであったり、家族や親しい友人であったり、はたまた見知らぬ誰か、ということもあるでしょう。ここでは、福岡県立美術館の所蔵作品の中から、女性たちが登場する作品をご紹介いたします。
「松浦川」
吉村忠夫
昭和17年(1942)
絹本着色・軸装
49.0×56.5cm
川辺で釣りをする二人の女性。腰高の巻スカート上の衣装に長い腰紐、肩には薄手の衣を巻くという、奈良天平風のいでたちです。本作は、神功皇后が松浦川(佐賀県北部)のほとりで食事のための鮎を釣ったという『古事記』に記される故事に取材しています。日本史に登場する女将軍として有名な神功皇后ですが、浅瀬で釣りをたしなむ姿は、なんだか親しみやすくもあります。川辺御楯《神功皇后図》に描かれる神功皇后とも比べてみましょう。
吉村忠夫(よしむらただお・1898-1952)
福岡県遠賀郡黒崎町(現北九州市)に生まれる。幼時期に一家をあげて上京。東京美術学校に図書係として勤務中、画才を認められて大正4年(1915)同校日本画科に推薦入学し松岡映丘に師事する。同7年文展に初入選。翌年同校を首席で卒業し研究科に進む。同10年正倉院御物研究のため特別拝観の許可を得て以後10年間研究に励む。昭和5 年(1930)審査員となるなど官展の重鎮として活躍。同14年日本画院を創設。大和絵の伝統を生かした歴史風俗画を多く描いた。