近代洋画名品10選

5/10

福岡県立美術館のコレクションの核である近代洋画(油彩画・水彩画)の中から、10人の作家による名品10点を選りすぐってご紹介します。近代洋画には、九州ゆかりの作家が非常に多いことが知られていますが、ここで紹介する作家10人も全員が九州の出身です。九州の地ではぐくまれた豊かな近代洋画の広がりを感じてください。

「朝顔」

田崎廣助

昭和4年(1929)、第16回二科展

油彩・画布

86.8×79.1㎝

朝顔の花と葉とが色の塊としてボリューム感あふれる筆致で捉えられています。朝顔は花鳥画にしばしば描かれ、江戸時代の琳派などにおいても好まれた題材でした。そのような日本美術の伝統を踏まえながら、田崎廣助は、本作を端緒に朝顔を主題とした多くの制作を行いますが、それは、従来の花鳥画とは全く異なる絵画でした。というのも、田崎は西洋画の伝統と技法を咀嚼した、日本的な油絵を探求したいという意志を強く持っていたのです。本作を手掛けた後のフランス留学を経て、その思いをより一層強めた田崎は、帰国後も松と朝顔を組み合わせた油彩画を繰り返し描きました。

田崎廣助(たさきひろすけ・1898-1984)

福岡県八女郡北山村(現・八女市)に生まれる。県立八女中学を経て、大正6年(1917)福岡師範学校を卒業後、関西美術院に学び、坂本繁二郎、安井曾太郎に師事する。昭和7年(1932)から同10年にかけて滞欧し、この間、サロン・ドートンヌに出品する。同11年に一水会が創設され、翌年の第1回より出品、第2回展で一水会賞を受賞し、14年には同会会員となる。日展、現代美術展、日本国際美術展などにも出品し、四季折々の阿蘇山を描き続ける。42年日本芸術院会員となり、50年文化勲章を受賞。阿蘇の画家として知られる。
close