水のある風景

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海や川、湖など、水のある風景はしばしば多くの画家の心を捉え、様々なかたちで絵画に描かれてきました。ここでは、10人の洋画家が描いた「水のある風景」をご紹介します。風景画を中心に、水のある風景の中に描かれた人物など、「水のある風景」が見せる様々な表情をお楽しみください。

「渓谷」

髙島野十郎

昭和23年以降(after1948)

油彩・画布

45.0×37.5cm

髙島野十郎は、渓谷や渓流をテーマにいくつかの作品を描きましたが、それらを描く際には、岸辺に立って、来る日も来る日も水の流れを眺め続けたといいます。そうすると、いつしか水の流れが止まり、逆に周囲の岩場が動き始めたように感じ、その経験を絵にしたのだと語っています。確かに本作においても、流れる水の様子以上に、赤茶けた岩の方にこそ、どこかなまめかしい魅力と生命感が宿っているように思われます。岩場をかき分けるかのようにして生えている紅葉した葉も、どこか意味ありげです。

髙島野十郎(たかしまやじゅうろう・1890-1975)

福岡県久留米市に生まれる。県立中学明善校、名古屋の旧制八高を経て東京帝国大学農学部水産学科に入学。大正5年(1916)同校首席卒業後、独学で絵画制作に打ち込む。昭和5年(1930)からアメリカ経由で渡欧し各地を写生旅行する。同8年帰国後は生家に戻るも間もなく上京し、晩年は千葉県柏市に幽居する。帰国後は個展のみで作品を発表し、風景や静物を対象に細密な写実を追求した。火の点った蝋燭の作品がよく知られている。
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