輝く色彩

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絵画作品において、色彩は極めて重要な役割を持ち、用いられる色によって作品へもたらす雰囲気や印象が大きく変わります。ここでは絵画作品における色彩に注目し、華やかな雰囲気を持つ、色彩豊かな作品をご紹介します。

「けし」

髙島野十郎

昭和41年以降(after1966)

油彩・画布

60.2×50.0cm

自然の中に咲くけしの花びらや葉の表情が、細部に至るまで精緻に捉えられています。過剰なほどに細かな部分まで正確に描写された花の描き方には、自然科学者的な眼差しさえ垣間見えます。うねりながらも空へ向かってその身を高くするかのように生き生きと咲く赤や桃色の花のひとつひとつから、生命の息遣いが聞こえてきそうです。本作には、虞美人草という別名を持つけしの花の、妖艶な魅力や情念までもが込められているようです。

髙島野十郎(たかしまやじゅうろう・1890-1975)

福岡県久留米市に生まれる。県立中学明善校、名古屋の旧制八高を経て東京帝国大学農学部水産学科に入学。大正5年(1916)同校首席卒業後、独学で絵画制作に打ち込む。昭和5年(1930)からアメリカ経由で渡欧し各地を写生旅行する。同8年帰国後は生家に戻るも間もなく上京し、晩年は千葉県柏市に幽居する。帰国後は個展のみで作品を発表し、風景や静物を対象に細密な写実を追求した。火の点った蝋燭の作品がよく知られている。
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