花やぐ美術館

5/10

美しい自然、とくに花や草木は、洋画日本画、具象抽象を問わず、絵画の主題として描かれてきました。福岡県立美術館の所蔵作品から、季節と観るものの心を彩る華やかな自然を作品をご紹介いたします。

「蓮花」

児島善三郎

昭和14年(1939)、第9回独立展

油彩・画布

143.5×110.5cm

水面から天を目指して伸びる蓮の葉と、間に点々と咲く蓮の花。池などの水面が見えないほどひしめきあって咲いている様子が、見事に表れています。描かれる対象は、丸と直線と波線の組み合わせといった、最小限の筆線で捉えられています。こうした大胆に形を単純化した描き方には、西洋の模倣ではない「日本人の油絵」を追い求めた児島による、南画や琳派の研究の成果が表れていると言えるでしょう。

児島善三郎(こじまぜんざぶろう・1893-1962)

福岡市に生まれる。県立中学修猷館卒業後上京し一時、本郷洋画研究所で研鑽を積む。大正10年(1921)二科展に初入選し、翌年二科賞を受賞。同14年渡仏し、昭和3年(1928)に帰国。翌年二科会会員となるが、同5年同会を脱退。同志らと独立美術協会を設立し、以後同会の代表作家として活躍する。西洋の模倣ではない日本人の油絵を目指し、南画や琳派の作風を取り込んだ装飾性の高い独自の絵画を確立した。
close