花やぐ美術館

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美しい自然、とくに花や草木は、洋画日本画、具象抽象を問わず、絵画の主題として描かれてきました。福岡県立美術館の所蔵作品から、季節と観るものの心を彩る華やかな自然を作品をご紹介いたします。

「花鳥図」

梅沢晴峨

江戸時代後期

絹本着色・軸装

99.9×41.3cm

一方は木の上から見下ろすように、一方は岩の上から見上げるように、お互い見つめあう二羽の鳥。特徴的な長い尾羽と頭の配色から、おそらく同種の鳥、つがいでしょうか。大輪の花を咲かせる芍薬は、初夏の訪れを表します。花と鳥を描く、文字通り典型的な花鳥画ですが、一枚一枚緻密に描かれた花弁、伝統的な漢画の筆法を示す岩や木の幹、そして絶妙に大きさの変化を付けることで奥行を感じさせる鳥とそれらを配置する空間の取り方には、晴峨のお抱え絵師としての学習の積重ねと技量の高さをうかがわせます。

梅沢晴峨(うめさわせいが・生年不詳-1864)

柳川藩定府(江戸詰め)のお抱え絵師。江戸木挽町狩野家の晴川院養信に絵を学び、師から城内の絵をまかされたなどの伝承からも高弟であったことが推測される。山門郡の女性を妻にむかえ、晩年主命によって屋敷を賜り、柳川に移り住んだと伝えられている。柳川藩主の立花家にも作品が数点残されるが、漢画風から大和絵風まで器用にこなし、いずれも穏やかで洗練された画風を示している。
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