描かれた女性たち

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絵画制作のモデルとして、女性はしばしば絵画に描かれてきました。それは専属のモデルであったり、家族や親しい友人であったり、はたまた見知らぬ誰か、ということもあるでしょう。ここでは、福岡県立美術館の所蔵作品の中から、女性たちが登場する作品をご紹介いたします。

「神功皇后図」

川辺御楯

明治22年頃(c.1889)

絹本着色・軸装

153.2×70.8cm

神功皇后は三韓征伐の帰途に、現在の宇美八幡宮(福岡県糟屋郡宇美町)で応神天皇を産んだと、『古事記』や『日本書記』に記されています。本作はそうした伝説に取材したもので、赤と青の鮮やかな幔幕に囲まれ、華やかな衣装を身にまとう神功皇后に、生まれた皇子を抱く武内宿禰が描かれています。男装して出征した神功皇后、勇ましい鎧姿なども多く描かれますが、ここでは生まれたての我が子を優しくも凛と見つめる母の姿のようです。

川辺御楯(かわべみたて・1838-1905)

筑後国柳河に生まれる。別号は鷺外、墨流亭、後素堂など。久留米藩御用絵師三谷三雄に入門、狩野派を学ぶが、のち土佐派に転向、かたわら同藩の学者に有職故実や国学を学び、幕末の頃は勤皇家として国事に奔走。維新後藩命により上京、太政官や伊勢神宮に出仕する。また土佐光文に3年間師事し、有職故実に精通した大和絵歴史画家として名をあげた。明治15年(1882)、17年の内国絵画共進会で連続受賞。また、皇室への献画も多数。門人に邨田丹陵、中村岳陵らを輩出した。
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