描かれた女性たち

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絵画制作のモデルとして、女性はしばしば絵画に描かれてきました。それは専属のモデルであったり、家族や親しい友人であったり、はたまた見知らぬ誰か、ということもあるでしょう。ここでは、福岡県立美術館の所蔵作品の中から、女性たちが登場する作品をご紹介いたします。

「梳る女」

児島善三郎

大正15年(1926)

油彩・画布

116.5×88.2cm

児島は、西洋の模倣でない日本の油絵を目指すには西洋の油絵を知るべきと考え、フランスに渡りました。本作は、ティツィアーノを研究していた留学初期の作品。裸婦の肉体の量感あふれる表現に、その成果が見てとれます。以後、フォービスムなどヨーロッパで新しい美術運動をさらに吸収し、日本の南画や琳派の研究を経て、児島独自の「日本人の油絵」が形作られていきます。その過程の初期を示す作品であると言えるでしょう。

児島善三郎(こじまぜんざぶろう・1893-1962)

福岡市に生まれる。県立中学修猷館卒業後上京し一時、本郷洋画研究所で研鑽を積む。大正10年(1921)二科展に初入選し、翌年二科賞を受賞。同14年渡仏し、昭和3年(1928)に帰国。翌年二科会会員となるが、同5年同会を脱退。同志らと独立美術協会を設立し、以後同会の代表作家として活躍する。西洋の模倣ではない日本人の油絵を目指し、南画や琳派の作風を取り込んだ装飾性の高い独自の絵画を確立した。
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