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冨田溪仙
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京都画壇で活躍した冨田溪仙(1879-1936)は、福岡県を代表する近代日本画家のひとりです。福岡県立美術館の所蔵する溪仙作品から、代表作を始め、溪仙の個性的かつ詩的な作風を示す作品をご紹介いたします。
「雨中の鷺」
冨田溪仙
大正6年(1917)
絹本着色・軸装、「十二ヶ月図」のうち六月
171.3×41.6cm
どんよりとした空に、ざわめく木々、そして、飛び交う鷺。突然の悪天に羽を休める場所を探しているのでしょうか。また、画面下には、慌てて舟を岸に着ける人々。舟の上の人物を見ると、画面左からかなり強い風雨に吹かれているようにも見えます。梅雨時の重たい雨の空気を、画面全体に引いた薄墨のぼかしで見事に表現している一方、鷺も人も雨風をしのぐべく慌てている様子がほほえましい作品です。
冨田溪仙(とみたけいせん・1879-1936)
福岡市に生まれる。本名鎮五郎。少年の頃衣笠守正に狩野派を学ぶ。明治29年(1896)京都に出奔し翌年四条派の都路華香に入門。日本絵画協会展、後素協会展などで入選を重ねる。大正元年(1911)南画風の筆致による文展初入選作「鵜船」が横山大観に認められ、大正3年再興院展に京都派から初参加、翌年同人のち審査員となる。新南画ともいえる画風を拓いたが、後年は清新な自然観照にもとづく独自の表現に至った。