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近代洋画名品10選
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福岡県立美術館のコレクションの核である近代洋画(油彩画・水彩画)の中から、10人の作家による名品10点を選りすぐってご紹介します。近代洋画には、九州ゆかりの作家が非常に多いことが知られていますが、ここで紹介する作家10人も全員が九州の出身です。九州の地ではぐくまれた豊かな近代洋画の広がりを感じてください。
「波勝崎」
中村琢二
昭和48年(1973)
油彩・画布
45.5×53.0㎝
本作の舞台となったのは静岡県南伊豆の波勝崎で、そこに広がる紺碧の海が、美しくやわらかな青色によって表現されています。断崖絶壁の景観で知られる同地ですが、岩壁や海沿いの集落がほのぼのとした丸みのあるタッチで描かれているせいか、とてものどかな光景に見えます。ひと月の半分以上を旅するほど旅を愛した中村琢二は、旅先にスケッチブックとキャンバスをつねに持参して、気に入った風景を見つけるたびにその場で絵に描きました。本作にもみられる軽やかな色彩と生き生きとしたタッチからは、旅先で出会った美しい風景への感動が伝わってきます。
中村琢二(なかむらたくじ・1897-1988)
中村研一の実弟として新潟県佐渡島に生まれる。のち福岡県宗像郡に移住。県立中学修猷館を経て、大正13年(1924)東京帝国大学(現・東京大学)を卒業。昭和3年(1928)帰国した兄の勧めで本格的に絵筆を握ることを決意。昭和5年安井曾太郎に師事し、同年から二科展に連続入選する。同17年一水会会員となり、戦後は日展にも出品を重ね、同会顧問となる。明快な色調と軽妙なタッチの親しみやすい風景画、人物画を得意とした。