櫨紅葉(音羽護国寺) | 福岡県美のたからもの

花やぐ美術館 7/10: 美しい自然、とくに花や草木は、洋画日本画、具象抽象を問わず、絵画の主題として描かれてきました。福岡県立美術館の所蔵作品から、季節と観るものの心を彩る華やかな自然を作品をご紹介いたします。

「櫨紅葉(音羽護国寺)」

松田諦晶

大正3年(1914)

油彩・画布

72.8×91.0cm

季節は秋、真っ赤に紅葉した櫨(ハゼ)の木が画面いっぱいに描かれています。筆致を短く繰り返すように描かれた葉は、櫨の木の特徴でもある細長い葉の形を的確にとらえ、風に木がざわめくような動きを表現しています。日本では九州・四国で主に栽培される櫨の木。松田の故郷である久留米にも多く自生しています。音羽護国寺は東京の寺院で、松田が上京した際に描いたものですが、その心中では故郷への思いを強くしていたのでしょう。その後松田は久留米に戻り、後進の育成に励みました。

松田諦晶(まつだていしょう・1886-1961)

福岡県久留米市に生まれ、久留米高等小学校で図画教師森三美の教えを受ける。明治33年(1900)久留米商業学校に入学、学業の傍ら盛んに絵を描く。同43年太平洋画会展に初入選。この頃から古賀春江に絵を手解きする。大正3年(1914)の第１回二科展から連続入選を果たすが、同11年古賀のデビュ－と入れ替わりに中央画壇から遠のく。その後は大正2年に郷里で結成した来目洋画会の中心メンバ－として後進の育成に努め、昭和6年(1931)には久留米洋画研究所を開設する。同23年から久留米商業高校の美術教師に就任、同36年には久留米市文化功労賞を授与される。